BFRトレーニングと血管の健康の関係は

BFRトレーニングと血管の健康の関係は

血流を制限した状態でエクササイズを行うBFRトレーニングは、血管の健康にどのような影響をおよぼすのでしょうか。
変化がないとする報告もありますが、一般的にウェイトトレーニングは、動脈コンプライアンスを悪化させることが知られています。(※1、※2)しかし有酸素運動と組み合わせたり、サーキット的なやり方にしたりすることで、逆に動脈硬化を改善させるという報告もあります。(※3、※4)

ではBFRトレーニングを行った場合はどうでしょうか。Fahsらの研究によれば、20%1RMの負荷で30reps→15reps*3セット、200mmHgで行ったところ、動脈コンプライアンスが改善しています。(※5)
またTakanoらの研究では20%1RMの負荷で30reps→できるだけ*3セット、160~180mmHgで行ったところ、VEGFの増加を認めています。(※6)低酸素状態に反応するHIF(Hypoxia inducible factor)という転写活性化因子があります。これはαとβの二つのサブユニットからできており、普段はαが働いていません。しかし低酸素状態になるとαとβの両方が働くことができるようになり、VEGF遺伝子が活性化されるのです。
VEGF というのはVascular endothelial growth factorの略であり、血管内皮細胞成長因子のこと。つまりBFRトレーニングにより血管が発達するということに他なりません。

そしてHuntらの研究では40%1RMの負荷、80mmHgで握力トレーニングを行ったところ、血管の直径が3.1%太くなっています。(※7)
なおBFRによるウォーキングの結果として、10週間に渡り週4回の頻度で一回20分のウォーキングを行ったところ(140~200mmHg)、動脈コンプライアンスが改善しています。これは平均66歳の被験者を用いたものでした。(※8)

血管内皮機能(FMD)に関しては、効果があったとする報告と逆効果だったとする報告の両方があります。
これまでの報告によれば、BFRトレーニングは血管の健康に悪くはなく、むしろ改善する可能性が高いと考えて良さそうです。

一方、血栓の可能性についてはどうでしょうか。トロンビンアンチトロンビンⅢ複合体(TAT)とD-Dimerはエクササイズの時間に比例して増加するものの、短時間で乳酸が溜まるような高強度のトレーニングでは、それが起こらなかったという報告があります。(※9、※10)

トロンビンは血液を固める物質です。それが発生すると、すぐにトロンビンを阻害するアンチトロンビンⅢができて結合し、トロンビンが不活化されます。つまりTATが増加しているということは、血液が凝固しやすい状態だということです。

つまり虚血再灌流による血栓の害を防ぐためにも、BFRトレーニングは短時間で終わらせたほうが良いということになります。また短時間で終わらせさえすれば、むしろ長時間のウェイトトレーニングよりも、凝固系を活性化してしまう恐れが少なくなるとも言えます。

なお血圧計カフを用いて5分間の間、200mmHgで上腕の血流を止め、5分間休ませ、再度締め付けるという方法を4回繰り返したところ、心組織の損傷を30%減少させることができたという報告もあります。(※11)

References
※1:
M. Miyachi, H. Kawano, J. Sugawara et al., “Unfavorable effects of resistance training on central arterial compliance: a randomized intervention study,” Circulation, vol. 110, no. 18, pp. 2858–2863, 2004.

※2:
S. R. Collier, J. A. Kanaley, R. Carhart et al., “Effect of 4 weeks of aerobic or resistance exercise training on arterial stiffness, blood flow and blood pressure in pre- and stage-1 hypertensives,” Journal of Human Hypertension, vol. 22, no. 10, pp. 678–686, 2008.

※3:
H. Kawano, H. Tanaka, and M. Miyachi, “Resistance training and arterial compliance: keeping the benefits while minimizing the stiffening,” Journal of Hypertension, vol. 24, no. 9, pp. 1753–1759, 2006.

※4:
A. Figueroa, S. Y. Park, D. Y. Seo, M. A. Sanchez-Gonzalez, and Y. H. Baek, “Combined resistance and endurance exercise training improves arterial stiffness, blood pressure, and muscle strength in postmenopausal women,” Menopause, vol. 18, no. 9, pp. 981–984, 2011.

※5:
C. A. Fahs, L. M. Rossow, D. I. Seo et al., “Effect of different types of resistance exercise on arterial compliance and calf blood flow,” European Journal of Applied Physiology, vol. 111, no. 12, pp. 2969–2975, 2011.

※6:
H. Takano, T. Morita, H. Iida et al., “Hemodynamic and hormonal responses to a short-term low-intensity resistance exercise with the reduction of muscle blood flow,” European Journal of Applied Physiology, vol. 95, no. 1, pp. 65–73, 2005.

※7:
J. E. Hunt, L. A. Walton, and R. A. Ferguson, “Brachial artery modifications to blood flow-restricted handgrip training and detraining,” Journal of Applied Physiology, vol. 112, no. 6, pp. 956–961, 2012.

※8:
H. Ozaki, M. Miyachi, T. Nakajima, and T. Abe, “Effects of 10 weeks walk training with leg blood flow reduction on carotid arterial compliance and muscle size in the elderly adults,” Angiology, vol. 62, no. 1, pp. 81–86, 2011.

※9:
T. Hilberg, E. Eichler, D. Gläser, D. Prasa, J. Stürzebecher, and H. H. W. Gabriel, “Blood coagulation and fibrinolysis before and after exhaustive exercise in patients with IDDM,” Thrombosis and Haemostasis, vol. 90, no. 6, pp. 1065–1073, 2003.

※10:
Hilberg T1, Prasa D, Stürzebecher J, Gläser D, Schneider K, Gabriel HH.
Blood coagulation and fibrinolysis after extreme short-term exercise.
Thromb Res. 2003 Mar 15;109(5-6):271-7.

※11:Astrid D. Sloth, Michael R. Schmidt, Kim Munk, Rajesh K. Kharbanda, Andrew N. Redington, Morten Schmidt, Lars Pedersen, Henrik T. Sørensen, Hans Erik Bøtker, CONDI Investigators
Improved long-term clinical outcomes in patients with ST-elevation myocardial infarction undergoing remote ischaemic conditioning as an adjunct to primary percutaneous coronary intervention
Eur Heart J. 2014;35(3):168-175.


山本 義徳

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