Ischemic PC とBFRトレーニングの関係は

Ischemic PC とBFRトレーニングの関係は

短時間の心筋虚血を行うことで、心筋は虚血に対する耐性を獲得し、致死的な虚血による傷害から護ることができる。この現象をDuke大学のMurryらはpreconditioning with ischemiaと命名した。(※1)

虚血からの再灌流において細胞は傷害される。薬物治療における効果は50%ほどだったが、Ischemic PCの効果は75~90%におよぶほど強力だったのである。またIschemic PCは心筋だけでなく脳や腎臓、肝臓、筋肉など多くの臓器において効果が認められている。

なお虚血を解除したその後に(post)数十秒の虚血を反復させることで、心筋梗塞による傷害を減じたり(※2)、離れた位置にある別の臓器や四肢に短時間の虚血を反復することによって標的臓器の虚血耐性を獲得するRemote PCもヒトでの有効性が確認されている。(※3)これはBFRトレーニングと酷似していると言ってよい。

作用機序として様々なメカニズムが考えられているが、その一つとしてHIF(低酸素誘導因子)の関与が挙げられるだろう。HIFノックアウトマウスでは、Ischemic PCの効果が失われる。(※4)
なおHIF下流遺伝子のNADHデヒドロゲナーゼユビキノン1αサブコンプレックス4like2は複合体ⅠのNADH脱水素酵素を抑制し、ROS発生を抑制する。(※5)

即ち短時間の虚血を反復することは、むしろ臓器を保護してくれる可能性がある。これはホルミシス効果の一種かもしれない。

しかし血栓ができる危険性はないのだろうか。ラットの実験では、Remote PCはむしろ血栓の形成を減らす可能性も示唆している。(※6)
また静脈血栓塞栓症の予防法として「間歇的空気圧迫法」というものがあり、静脈灌流を促進し、血管内皮細胞の抗血栓作用を高める(TFPI上昇、NOやプロスタサイクリン発生、t-PA増加など)ことにより、静脈血栓塞栓症の予防に使われている。
代表的なプロトコルとしては、大腿部と下腿部を50mmHg、足底を130mmHgで30~43秒圧迫し、除圧する。それを数時間繰り返す。(ウィズエアーDVTの場合)

筆者が推奨するIntermittent BFR トレーニングでは、圧迫する力は弱く(80~150mmHg)、血流を制限したままの時間も短い(数十秒)。血栓のできる心配は、ほとんどないと言ってよいだろう。

※1:
Preconditioning with ischemia: a delay of lethal cell injury in ischemic myocardium.
Circulation. 1986 Nov;74(5):1124-36

※2:
Postconditioning the human heart.
Circulation. 2005 Oct 4;112(14):2143-8. Epub 2005 Sep 26.

※3:
Remote ischaemic conditioning before hospital admission, as a complement to angioplasty, and effect on myocardial salvage in patients with acute myocardial infarction: a randomised trial.
Lancet. 2010 Feb 27;375(9716):727-34. doi: 10.1016/S0140-6736(09)62001-8.

※4:
Complete loss of ischaemic preconditioning-induced cardioprotection in mice with partial deficiency of HIF-1 alpha.
Cardiovasc Res. 2008 Feb 1;77(3):463-70. Epub 2007 Oct 11

※5:
Induction of the mitochondrial NDUFA4L2 protein by HIF-1α decreases oxygen consumption by inhibiting Complex I activity. 
Cell Metab. 2011 Dec 7;14(6):768-79. doi: 10.1016/j.cmet.2011.10.008. Epub 2011 Nov 17

※6:
Remote ischemic preconditioning reduces thrombus formation in the rat.
J Thromb Haemost. 2012 Nov;10(11):2405-6. doi: 10.1111/j.1538-7836.2012.04914.x


山本 義徳

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