ホルミシスとしてのBFRトレーニング

ホルミシスとしてのBFRトレーニング

「ホルミシス」という概念がある。これはある物質が高濃度だと害をおよぼすのに、低濃度だと逆に有益な作用をもたらしてくれるというものだ。ホメオパシー(これは非科学的だと思う)も、この概念を応用したものだろう。

現在は放射線との関連で持ち出されることの多いホルミシスであるが、例えば紫外線は適量だとビタミンD合成に必要だが過量だと癌を引き起こすというのもホルミシスであり、また運動もそのときは活性酸素を発生させて有害ではあるが、それに適応しようとして抗酸化酵素を増やし、逆に健康を促進してくれるというのもホルミシスの一種である。

では血流を制限して行うBFR(Blood Flow Restriction)トレーニングは、どうなのだろうか。血流を制限するというのはカラダにとって悪いことのように思える。しかし軽い圧迫、短い時間で行うBFRトレーニングには、むしろホルミシスとしての効果が期待でき、健康への有益な作用があるのかもしれない。(※1)

一般的なウェイトトレーニングは高重量を扱い、時には呼吸を止め、コルチゾルを大量に分泌させ、関節への負担も大きく、ベンチプレスでの死亡事故はいつまで経っても後を絶たない。またウェイトトレーニングが効果をあげるには、一般的に70%1RM以上の強度が必要とされることを考えると、身体の弱い高齢者や怪我人が行うには少々ハードルが高いだろう。

しかしBFRトレーニングの場合、20%1RMでも効果を得ることができる。ケガによって下肢の筋力が非常に低下してしまった患者を対象にした研究では、20%1RMの負荷、110mmHgの圧でBFRトレーニングを2週間に渡って行わせたところ、ピークトルクにおいて13~37%、パワーにおいて42~81%もの向上が見られている。(※2)

またBFRトレーニングは自律神経機能を改善し、さらにエンドセリン1の刺激を減らすことによって血管内皮機能を改善する。(※3)そして高血圧患者の血圧改善にも効果があるようだ。(※4)

適切な圧力、適切な圧迫時間で行えば、BFRトレーニングは安全に行うことができる。「流れを止めるのは良くない」といった単純で幼稚な論理にとらわれることなく、豊富な文献を基にした科学的判断を基準にして考えるようにしていきたいものである。


※1:
Blood flow restriction pressure recommendations: the hormesis hypothesis.
Med Hypotheses. 2014 May;82(5):623-6. doi: 10.1016/j.mehy.2014.02.023. Epub 2014 Mar

※2:
Blood flow restriction rehabilitation for extremity weakness: a case series.
J Spec Oper Med. 2015 Spring;15(1):50-6.

※3:
Low intensity resistance exercise training with blood flow restriction: insight into cardiovascular function, and skeletal muscle hypertrophy in humans.
Korean J Physiol Pharmacol. 2015 May;19(3):191-6. doi: 10.4196/kjpp.2015.19.3.191. Epub 2015 Apr 30.

※4:
The acute effect of resistance exercise with blood flow restriction with hemodynamic variables on hypertensive subjects.
J Hum Kinet. 2014 Nov 12;43:79-85. doi: 10.2478/hukin-2014-0092. eCollection 2014.


山本 義徳

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