脳のエネルギーはブドウ糖とケトン体、そして・・

脳のエネルギーはブドウ糖とケトン体、そして・・

脳はブドウ糖しかエネルギーに使えない、という時代遅れの医者も減ってきたようで、ケトン体が脳で使われることは既に周知の事実となってきました。
しかしここにきて、さらに別のものが脳のエネルギーとなりうることが分かってきたのです。

それは「乳酸」です。もともと乳酸は低血糖時にエネルギー源となることが知られていて、脳の神経細胞でグルコースと同じように使われ、それは通常で全体の約10%程度、理論上は60%まで代替可能だとされてきました。(※1)

そして最近の報告により、脳の星状細胞において高濃度で存在する乳酸が、ニューロンに向かって流れていることが実際に確認されたのです。(※2)
そして乳酸はピルビン酸となり、ATPを作り出します。なお血中乳酸濃度は脳の乳酸濃度とリンクしますので、トレーニングで乳酸が発生した場合、脳で乳酸が使われるレベルも高くなると思われます。

また筑波大学の研究で、脳のグリコーゲン減少が中枢性疲労の原因である可能性が指摘されました。(※3)
これまでは血糖値の低下や脳内セロトニンの上昇、脳内モノアミン増加などが中枢疲労の原因だとされてきましたが、これらの作用により脳内グリコーゲンが減少するからこそ、疲労が起こるという説です。
そして同じ研究グループが運動中の脳グリコーゲン減少とそれに伴う乳酸の増加、セロトニンの増加を確認しています。(※4)

脳のエネルギー代謝経路が詳細に分かるようになることで、様々な疾患の予防や治療に役立つようになるだけでなく、健常者が脳の機能をさらに高めるための方策についても明らかになってくることでしょう。今後の研究展開が非常に楽しみとなってきました。


※1:
The contribution of blood lactate to brain energy metabolism in humans measured by dynamic 13C nuclear magnetic resonance spectroscopy.
J Neurosci. 2010 Oct 20;30(42):13983-91. doi: 10.1523/JNEUROSCI.2040-10.2010.

※2:
In Vivo Evidence for a Lactate Gradient from Astrocytes to Neurons.
Cell Metab. 2015 Nov 18. pii: S1550-4131(15)00526-4. doi: 10.1016/j.cmet.2015.10.010.

※3:
Brain glycogen decreases during prolonged exercise.
J Physiol. 2011 Jul 1;589(Pt 13):3383-93. doi: 10.1113/jphysiol.2010.203570. Epub 2011 Apr 26.

※4:
Brain Glycogen Decreases During Intense Exercise Without Hypoglycemia: The Possible Involvement of Serotonin.
Neurochem Res. 2015 Jul;40(7):1333-40. doi: 10.1007/s11064-015-1594-1. Epub 2015 Jun 3.


山本 義徳

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