BFRトレーニングと筋発達の関係

血流を制限して行うトレーニング、いわゆるBFR(Blood Flow Restriction)トレーニングにおいては、成長ホルモンの分泌によって筋発達がおこるとされてきました。血流を制限してトレーニングを行うことにより乳酸が溜まり、それが脳下垂体を刺激して成長ホルモンを分泌させるのです。(※1)

ただし成長ホルモンの分泌は体脂肪燃焼には効果的なものの、筋発達への影響はそれほど大きくないことが知られています。(※2)
しかし、実際にBFRトレーニングを行うことにより、通常の高強度トレーニングに劣らぬ筋発達効果が得られることは、数多くのレビューによって明らかとなっています。(※3、※4、※5)

では、どのようにしてBFRトレーニングは筋発達をもたらすのでしょうか。

BFRトレーニングによってミオスタチンの阻害が起こるという報告があります。(※6)ミオスタチンは筋肉が過剰に発達するのを抑え、他のもっと生命にとって必要な部位にタンパク質が使われるように働くための遺伝子です。つまりミオスタチンが阻害されれば、筋肉が発達するということになります。
この研究では平均65歳の男性が12週間に渡ってBFRTを行ったところ、フォリスタチンが40%上昇し、ミオスタチンのmRNAが25%低下しました。なおフォリスタチンはミオスタチンと結合して、その作用を阻害する作用があります。

そしてもう一つのメカニズムとして、BFRTはmTORC1を活性化するという報告もあります。(※7、※8)
mTORはDNAの転写・翻訳や成長因子、細胞のエネルギー、酸化還元状態など様々な細胞内外の環境情報を統合し、調節していくシグナル伝達経路におけるキナーゼです。細胞が増殖するかどうかを決めるセンサーだと考えると分かりやすいでしょう。
mTORが活性化すると、その下流にあるタンパク合成酵素がリン酸化されることにより、タンパク質の合成が盛んになるのです。

すなわちBFRトレーニングはミオスタチンを阻害して筋分解を防ぎ、同時にmTORC1を活性化して筋タンパク合成を高めることにより、筋発達をもたらすと考えられます。
なお前述の成長ホルモン活性化作用も、筋におけるコラーゲン合成作用を促進することにより、筋肥大に役立つとともに、ケガの防止やリハビリ促進にも貢献することが期待できます。

軽い重量で短時間に行えるBFRトレーニングは高齢者のリハビリやロコモティブ・シンドローム対策にも有用であり、今後さらに広まっていくものと思われます。

※1:
Hormone responses to an acute bout of low intensity blood flow restricted resistance exercise in college-aged females.
Kim E1, Gregg LD1, Kim L1, Sherk VD2, Bemben MG1, Bemben DA2.
J Sports Sci Med. 2014 Jan 20;13(1):91-6. eCollection 2014.

※2:
Blood flow-restricted walking in older women: does the acute hormonal response associate with muscle hypertrophy?
Ozaki H1, Loenneke JP2, Abe T3.
Clin Physiol Funct Imaging. 2015 Oct 30. doi: 10.1111/cpf.12312

※3:
Low intensity blood flow restriction training: a meta-analysis.
Loenneke JP1, Wilson JM, Marín PJ, Zourdos MC, Bemben MG.
Eur J Appl Physiol. 2012 May;112(5):1849-59. doi: 10.1007/s00421-011-2167-x. Epub 2011 Sep 16.

※4:
Low intensity resistance exercise training with blood flow restriction: insight into cardiovascular function, and skeletal muscle hypertrophy in humans.
Park SY1, Kwak YS2, Harveson A3, Weavil JC1, Seo KE4.
Korean J Physiol Pharmacol. 2015 May;19(3):191-6. doi: 10.4196/kjpp.2015.19.3.191. Epub 2015 Apr 30.

※5:
Blood flow restricted exercise for athletes: A review of available evidence.
Scott BR1, Loenneke JP2, Slattery KM3, Dascombe BJ4.
J Sci Med Sport. 2015 May 9. pii: S1440-2440(15)00096-1. doi: 10.1016/j.jsams.2015.04.014.

※6:
Blood flow restricted resistance training attenuates myostatin gene expression in a patient with inclusion body myositis.
Santos AR1, Neves MT Jr2, Gualano B3, Laurentino GC4, Lancha AH Jr4, Ugrinowitsch C4, Lima FR5, Aoki MS6.
Biol Sport. 2014 Jun;31(2):121-4. doi: 10.5604/20831862.1097479. Epub 2014 Apr 5.

※7:
Activation of mTORC1 signaling and protein synthesis in human muscle following blood flow restriction exercise is inhibited by rapamycin.
Gundermann DM1, Walker DK1, Reidy PT1, Borack MS1, Dickinson JM2, Volpi E3, Rasmussen BB4.
Am J Physiol Endocrinol Metab. 2014 May 15;306(10):E1198-204. doi: 10.1152/ajpendo.00600.2013. Epub 2014 Apr 1.

※8:
Blood flow restriction exercise stimulates mTORC1 signaling and muscle protein synthesis in older men.
J Appl Physiol (1985). 2010 May;108(5):1199-209. doi: 10.1152/japplphysiol.01266.2009. Epub 2010 Feb 11.
Fry CS1, Glynn EL, Drummond MJ, Timmerman KL, Fujita S, Abe T, Dhanani S, Volpi E, Rasmussen BB.


山本 義徳

Page Topへ