サプリメントつれづれ日記 第八十三段

サプリメントつれづれ日記 第八十三段

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 「亢竜の悔いあり」とかやいふこと侍はべるなり。月満ちては欠かけ、物盛りにしては衰ふ。万の事、先さきの詰まりたるは、破れに近き道なり。
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学問の世界は知見が積み重なり、スポーツの記録も伸び続け、多くの分野において昔よりも今の方が発展していると言えるでしょう。しかし私たちの個体としては知力も体力も若いころのほうが恐らく高く、中年期を超えると後は低下するばかりです。

残念ながら政治の世界や大手の会社では、若いころの遺産で上り詰めた老人たちが席を譲ろうとせず、若手がワリを喰うことになっています。若者たちにも選挙に行ったり組合を作ったり起業したりなどの行動が必要とされますが、理想的なのは老兵が何も言わず、静かに去っていくことでしょう。

とはいえ老兵にも経験から来る知見があり、知識量や情報処理能力は50~60歳を超えても、そうは衰えないことがわかっています。知識については今の時代、いくらでも調べれば入手できますので、大事なのは「経験を活かした情報処理」となります。

経験を活かすと言っても、前例がないからと言って提案を却下するのではなく、失敗した前例を活かして新たな方法を模索する方向に進むようにしたいものです。
すぐに提案を却下する老人は、失敗の経験が多いだけでなく、失敗への恐怖心が抑えられないのです。失敗して恥ずかしい思いをしたり、地位が転落したりといった経験が足かせとなっています。

ラットの実験では、失敗することを予測していると、恐怖心が薄れることが分かっています。恐怖心が薄れることを「恐怖学習の漸近現象」と呼び、このときは「扁桃体中心核→中脳水道周囲灰白質」回路が働き、扁桃体外側核が抑制されています。逆にこの回路を抑制すると、恐怖反応が増加します。(※1)

扁桃体においてはドーパミンがD1およびD2受容体を介して信号を伝達しています。そしてヒトの場合、扁桃体のD1受容体の密度が高いほど恐怖に反応しやすいという可能性が示唆されています。逆にD1受容体の密度が低いと、低い確率を過大評価し,高い確率を過小評価する傾向にあるようです。(※2, ※3)

実は抹茶の粉末に抗不安作用があるという報告があります。そしてD1受容体とセロトニン1A受容体阻害薬を投与されたマウスは抹茶粉末による抗不安作用がなくなってしまうそうです。(※4)

職場の老兵に抹茶をプレゼントすれば、もしかしたら若者からの提案をもっと受け入れてくれるようになるのかも?

※1:
A feedback neural circuit for calibrating aversive memory strength.
Nat Neurosci. 2017 Jan;20(1):90-97. doi: 10.1038/nn.4439. Epub 2016 Nov 14.

※2:
情動的意思決定における脳内分子メカニズムの解明
独立行政法人放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター

※3:
Dopamine D₁ receptors and nonlinear probability weighting in risky choice
J Neurosci. 2010 Dec 8;30(49):16567-72. doi: 10.1523/JNEUROSCI.3933-10.2010.

※4:
Anxiolytic activities of Matcha tea powder, extracts, and fractions in mice: Contribution of dopamine D1 receptor- and serotonin 5-HT1A receptor-mediated mechanisms
Journal of Functional Foods 59 301-308, 2019-08


山本 義徳

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