テタヌス刺激後増強の応用

テタヌス刺激後増強の応用

一般的にベンチプレスが100kg挙がる人は、だいたい80kgで10回くらい挙げられます。しかし中には15回くらいできる人や、5回くらいしかできない人もいます。これは速筋と遅筋の割合なども関係しますが、ほとんどは神経系の問題です。では神経系とは何か?
具体的に説明してみましょう。

神経Aから神経Bに情報が伝わるとき、神経Aの末端には「シナプス前膜」というものがあって、その中には「シナプス小胞」という「神経伝達物質」を詰め込んだ袋があります。
脳からの指令は電気的な刺激によって伝えられ、これが神経Aを通って末端までたどり着くと、シナプス小胞が壊れて神経伝達物質が放出されます。

すると神経Aと神経Bとの間に神経伝達物質が流れ出し、それが神経Bに電気刺激を与えます。その刺激は、今度は神経Bの末端にあるシナプス前膜にたどり着き、同じようにして神経Cに電気刺激が与えられる・・という流れです。

この神経伝達の流れがうまくいっていると、筋肉に伝わる電気刺激がスムーズに伝えられます。このとき、筋肉は強い力を出せるようになるのです。ベンチプレスが80kgで5回しかできないのに、100kgを挙げられるような人は、この流れがスムーズに行っているのです。

では、どうすれば神経伝達がうまくいくのか。まずは「神経伝達物質」が十分にあることが必要となります。そのためには神経伝達物質の材料をふんだんに摂取することですが、これは栄養面の問題になってきますので、そちらは別の機会に。

さて、他にも神経伝達をスムーズにする方法があります。脳からの電気刺激が神経を通って行くという話をしましたが、この電気刺激は1回だけではありません。何度も何度も電気的な刺激を受けることによって、やっと筋肉は収縮してくれるのです。
そして、電気刺激の頻度(一定時間内の回数)が高いほど、筋肉は強く収縮します。つまり、重い重量を扱っているときは、この電気刺激の頻度(レート・コーディング)が高いということになります。

このとき、こんな現象があります。「一度、電気刺激の頻度が高くなると、しばらくの間は神経伝達がスムーズになる」。これを「テタヌス刺激後増強」と言います。
カルシウムイオンの流入によりシナプス前膜とシナプス小胞が融合し、神経伝達物質が放出されますが、高頻度の電気刺激が与えられるとシナプス前膜にカルシウムイオンが蓄積し、神経伝達物質の放出量が増加するのです。

言い換えると、重い重量を扱ったあとは、神経伝達がスムーズに行くようになるということです。重い重量でトレーニングして、最後にパンプさせようとして重量を減らしてやってみたら、とても軽く感じたという経験をされたことがあるのではないでしょうか。

これをトレーニングに応用してみましょう。例えばベンチプレスのメインセットを100kgでやる場合、その前に110kgで1回だけやるのです。1回だけだったら筋肉の疲れは殆どありませんし、これだけで神経伝達をスムーズにする効果があります。そして2~3分休んでから、100kgでのメインセットをやってみましょう。いつもより軽く感じられて、普段より多くのレップスができるようになるかもしれません。

「ラックアップ」という方法もあります。今の例で言うと、メインセットの前に120kgにバーベルをセットして、「ラックから外す」だけ。つまりバーをラックから外してスタートポジションまで持ってきたら、すぐにラックに戻すのです。これを連続2~3回行います。
そしてやはり2~3分休み、100kgでのメインセットにトライ。

ここでのポイントは、「メインセットに入る前に、できるだけ筋肉を疲れさせないこと」。ですから、ラックアップはできるだけ少ない回数に抑えるようにしてください。

特に女性の場合、高重量に対して心理的な限界があって、少し重くなるだけで一気にレップスが減ってしまいがちです。このようなとき、狙う重量よりも10%ほど重くしてテタヌス刺激後増強。そしてメインセットに移ると、かなり軽く感じられて、意外に多くのレップスができてしまうかもしれません。


山本 義徳

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